パン屋ビジネスの魅力と課題
パン屋開業の魅力と課題は?
パン屋さんは新規顧客が来店しやすい業種ではありますので、早い段階から集客が期待できます。
一方、課題は大型機材がどうしても必要なので初期投資が高くなりがちである事に加え、薄利多売、長時間労働になりがちなどがあります。
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パン屋の開業には、魅力と共にリスクや課題も多いです。
魅力
- 創造性の発揮:自分独自のレシピやコンセプトを生かし、お客様に喜ばれるパンを提供できる点。
- 地域密着型ビジネス:地元の人々とつながりやすく、コミュニティの一部としての役割を担える。
- リピーター獲得:おいしいパンを作れば、リピーターが増えやすいという強み。
- 自己実現:脱サラして自分の夢を実現できるという充実感。
初期投資費用
初期投資は立地や設備の規模によって異なりますが、目安です。
- 店舗物件の取得:賃貸なら保証金や敷金、礼金で200万~500万円。
- 厨房設備:オーブン、ミキサー、発酵器などで300万~1,000万円。
- 内装・外装工事:これも100万~500万円。
- 原材料費:初回の材料仕入れで30万~100万円ほど。
- その他:広告費や許可申請、その他開業費用で50万~200万円。
- 合計すると、500万~1,500万円程度がかかることが多いです。
厨房機器が大きな負担になります。
メリット
- 自由度の高さ:経営や商品の決定権が自分にあり、自由にビジネスを展開できる。
- やりがい:お客様に直接喜ばれることが多く、モチベーションが上がる。
- 高収益の可能性:人気店になれば、リピーターや固定客から安定した収益を得られる。
デメリット
- 労働時間の長さ:朝早くから準備を始め、営業時間後も仕込みや清掃などの作業があるため、非常に長時間労働になりがち。
- 廃棄リスク:パンは日持ちしないため、売れ残りや無駄が発生しやすい。
- 競争の激しさ:特に都市部では競争が激しく、差別化が難しい。
- 体力面:肉体的な負担が大きく、特に腰や手に負担がかかることが多い。
廃業のリスク
- 集客不足:立地やマーケティングの失敗で集客が不十分になることが、廃業の大きな要因です。
- コスト管理の失敗:材料費や人件費のコントロールに失敗すると、利益を出せずに経営が困難に。
- 労働負担の過重:長時間労働が続くと、体力的・精神的に厳しくなり、最終的に廃業に追い込まれるケースもあります。
作業時間
- 仕込み:早朝4~5時に始める場合が多いです。特に発酵や焼成に時間がかかります。
- 営業:7時~10時くらいから店を開けるケースが多く、午前中にピークを迎える店舗も多いです。
- 片付け・準備:営業後も片付けや翌日の仕込みがあり、作業は夕方まで続きます。 合計すると、12~16時間労働になることも珍しくありません。
このように、パン屋開業は魅力も大きい反面、時間と体力、経営のスキルが求められるビジネスです。
営業スタイルは個々の考えによりますが、多くのスタッフを確保して朝から夜まで販売するスタイルもあれば、限定生産にして早く来店しないと売り切れるとアピールするのも一つです。
パン屋さんは初期投資が高い?
パン屋の開業では、特に機材への初期投資が大きな割合を占めます。
機材は製パンに必要なものが多く、その規模や種類によってコストが大きく変動します。一般的なパン屋に必要な機材とその費用の目安を以下に示します。
主な機材と費用
- オーブン
- パンの焼き上げに必須。業務用オーブンの価格は容量や性能によって変わります。
- 価格帯:100万円~500万円
- 電気オーブンやガスオーブン、コンベクションオーブンなどの種類があり、どれを選ぶかで価格が変動します。
- ミキサー
- 生地を均一に混ぜるためのミキサー。小型のものから大型のものまで選べます。
- 価格帯:20万円~100万円
- 大型のものだと1度に多くの生地を処理できるため効率的ですが、その分高価です。
- 発酵器(ホイロ)
- 生地を一定の温度と湿度で発酵させるための機材。
- 価格帯:30万円~200万円
- パンの種類や規模に応じてサイズを選びますが、小型店舗ならコンパクトなタイプもあります。
- 冷凍・冷蔵庫
- 原材料や仕込みの生地を保存するために必須です。パン屋の場合、温度管理が重要なため業務用の冷蔵庫が必要です。
- 価格帯:20万円~100万円
- 冷凍庫も必要で、これにより材料のロスを減らし、仕込みを効率化できます。
- 作業台
- 生地の成形や準備作業を行うための大きな作業台。ステンレス製や木製のものが一般的です。
- 価格帯:5万円~20万円
- パンケース・ショーケース
- 焼きあがったパンを陳列するためのガラスケースなど。
- 価格帯:10万円~50万円
- パンの魅力を引き出すために、見せ方も重要です。
- その他の小物類
- ボウル、スケール、パンカッター、トレーなど、細かい器具が多数必要です。
- 価格帯:合計で5万円~20万円
合計の目安
規模や機材の品質、店のコンセプトにもよりますが、パン屋の機材費用は500万~1,500万円程度が一般的な目安です。
高性能なオーブンや大型設備を揃えれば、さらに費用がかかるでしょう。
節約のポイント
- 中古機材の利用:パン屋の機材は新品で揃えると非常に高額になるため、中古市場からの調達も一つの選択肢です。中古機材は半額以下で手に入ることもあります。
- 但し、当然中古品ですの最新より機能は落ちますし、故障のリスクが高くなります。最新機能はパン製造の技術をフォローしてくれます。古い機材を使用するとなるとその分の技術力を問われる事になります。
- リース:機材を購入せず、リースで調達することも可能です。初期投資を抑えつつ、毎月のリース料金を支払う形になります。
他の設備費用
上記以外にも、内装工事費、空調設備、給排水工事などが発生し、これらもパン屋の初期投資費用を押し上げる要因となります。
総じて、パン屋は他の飲食業と比べても初期投資が高いですが、特にオーブンとミキサーの選択が大きなコストに影響します。
パン屋さんは単価低めで薄利多売?
パン屋は単価が低めであるため、確かに薄利多売のビジネスモデルになりやすい面があります。
個々のパンの価格が数百円程度であり、1つあたりの利益率は大きくありません。しかし、それを逆手に取ることで、適切な工夫をすることで収益性を向上させることも可能です。
薄利多売になりやすい理由
- 単価の低さ:パンは一般的に300円前後で販売されることが多く、単価が他の飲食業と比べて低めです。1回の購入で数点をまとめて買うお客様もいますが、1つあたりの利益は少ないです。
- 材料費の変動:パンの主な原材料である小麦やバター、牛乳などの価格は時折変動し、原材料費が上がると利益率に直接的な影響が出ます。材料費を価格に反映しづらいため、経営に影響を与えることがあります。
- 人件費と労働集約的な作業:パン作りは労働集約的で、特に手作りの場合は時間と手間がかかるため、人件費が利益に対して重くのしかかることが多いです。
薄利多売を改善する工夫
●付加価値の高いパンの開発:プレミアムな素材を使った高級パンや、健康志向を意識したパンなど、付加価値をつけて単価を上げることで、利益率を高めることができます。
例えば、天然酵母を使ったパンや、グルテンフリー、オーガニックのパンなどが一例です。
●セット販売:単価が安い個々のパンを組み合わせたセットメニューを提供することで、1人あたりの購入金額を増やすことができます。
朝食セットやランチセット、家族向けの大容量セットなど、バリエーションを持たせると良いです。
●焼きたての時間を活かす:パン屋の強みは、焼きたてのパンを提供できる点です。
焼きたてパンの時間をアピールし、客を特定の時間帯に集客することで、一度に多く販売することができます。これにより、売れ残りや廃棄を減らし、効率的に販売できます。
●サイドメニューの追加:パンだけでなく、コーヒーやスープなどのドリンクや軽食を提供することで、客単価を上げることが可能です。
カフェとしての機能を兼ね備えることで、リピーターの増加や滞在時間の延長を促せます。
●顧客管理やリピーターの育成:パン屋は地域密着型のビジネスであるため、常連客やリピーターの存在が重要です。
ポイントカードや会員制度を導入して顧客を固定化することで、安定した売上が期待できます。また、SNSなどで新商品の情報を発信し、定期的に来店してもらうように促すことも有効です。
●高回転のパンと差別化商品を両立:定番の人気商品(カレーパン、メロンパンなど)をしっかり用意しつつ、他店にはないオリジナル商品や季節限定商品を導入することで、競合との差別化を図り、購買意欲を引き出すことができます。
薄利多売のメリットとデメリット
メリット
- 多くの客層にリーチできる:低価格であれば、多くの顧客層にアプローチできるため、特に地域密着型のビジネスでは強みになります。
- 回転率を上げやすい:単価が安い分、商品が早く売れて回転率が上がり、一定の売上を確保しやすい。
デメリット
- 利益率が低い:特に高級材料を使った場合、利益率が低くなる傾向があり、厳しいコスト管理が必要です。
- 材料費や人件費の変動に弱い:コストに対して敏感であり、外部要因の影響を受けやすいです。
まとめ
パン屋は単価が低いため、薄利多売の傾向があるのは事実ですので、工夫次第で利益率を向上させてる為の経営戦略が必要です。
付加価値の高い商品開発や、セット販売・サイドメニューの導入などを駆使し、客単価やリピーターの増加を目指すことで、収益性を高めることができます。
パン屋さんは廃業率が高い?
パン屋の廃業率は他の飲食業と比較しても特に高いわけではありませんが、飲食業全体と同様にリスクが高い業種の一つです。
具体的な廃業率は統計によって異なりますが、一般的な飲食業は5年以内には半分以上廃業されています。
パン屋の特有の要因
パン屋には他の飲食店と比べていくつかの特徴があります。
廃業率を上げる要因
- 体力的な負担:パン作りは早朝からの長時間労働が必要なため、これが原因で体力的に続けられないケースがあります。
- 売れ残りリスク:パンは保存が難しく、売れ残った場合にすぐ廃棄しなければならないため、利益管理が難しくなる。
- 材料費の変動:小麦などの原材料費が高騰すると、利益率に直接影響を与えやすい。
廃業率を下げる要因
- リピーターの獲得がしやすい:他の飲食店と比較してパン屋は近隣住民を中心にリピーターがつきやすいことが多いです。美味しいパンを提供できれば、安定した顧客基盤を作りやすいです。
- 食事だけでなく嗜好品としての側面:パンは軽食やおやつとして、日常の中で頻繁に消費されるため、需要が途切れにくい。
他の飲食店と比較した特徴
- 飲食店全体:レストランやカフェ、居酒屋などは、パン屋よりもメニューの多様性で勝負していることが多く、食材や調理方法の選択肢が多いため、経営上の柔軟性が高いと言えます。一方で、それが複雑な管理を必要とする要因にもなり、廃業に繋がることもあります。
- パン屋:シンプルなメニューであっても、作業が多岐にわたり体力が必要ですが、顧客が一度気に入ればリピーターがつきやすいのが強みです。
廃業率を下げるためには、立地選び、原価管理、マーケティング、そして体力的・精神的な持続可能性をしっかり考える必要があります。
地域に密着している店舗は、学校などの定期的な大量受注を受けている事がありますが、新規開業からこのような利権はなかなか得るのは難しいと言えます。
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