開業前に撤退基準も設ける意味
飲食店開業は夢がある事業です。
資金の問題が大きいですが、難解な資格も必要でないので行動力とやる気があれば比較的誰でも挑戦し易いビジネスです。
ですが、成功者と呼ばれるような継続して営業を続けられる人が少ないのも事実です。
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3年続けられる店舗は半数ありません。
半年や1年以内に廃業する店舗も珍しくない程、難しい事業です。
それでもやる気のある方は挑戦するでしょう。
始める段階では、「閉店」「廃業」なんて言葉は1ミリも頭に浮かばないものです。
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ですが、初める段階で撤退基準を決めておく事が賢明です。
何の事業も立ち上げて軌道に乗せるのは大変です。
世の中に成功者と称される社長さんや事業家の人たちでも過去にいくつもの事業を失敗してきたと話されます。ですが、今成功者と成りうるのは事業の撤退基準を明確に持っているからではないでしょうか。
また、無理して続けるとその先どうなるかも熟知しているからではないでしょうか。
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事業が好転できないと思えば、キッパリ割切り次へ行く。
それが成功への道筋ではないでしょうか。
店舗開業は多額の資金が必要です。
失敗すると再起に時間が掛かりますので、「なんとかしないといけない」考えてしまうものです。
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ですので、開業前に自分自身で撤退基準を設けておく事がとても大事です。
撤退基準の具体例
飲食店開業では、事業がうまくいかないときの「撤退基準」を明確にしておくことが、長期的なリスクを軽減する重要な対策です。
開業時の熱意や目標がある一方で、客観的な撤退基準を設定することで、冷静な判断がしやすくなり、深刻な負債や精神的負担を避けることができます。
売上目標の未達
基準:開業後6カ月から1年以内に目標売上の80%未満が続く場合、撤退を検討する基準とする。
理由:一定の売上がないと、経費や人件費を賄うのが難しく、負債が増えてしまいます。また、低売上が続くと将来の成長も見込みにくく、経営が長期的に安定する見込みが薄くなります。
キャッシュフローの悪化
基準:運転資金が3カ月分以下に減少した時点で、新たな資金調達が困難であれば、廃業を検討する。
理由:飲食店の資金繰りは非常に重要です。現金が枯渇すると仕入れや人件費の支払いができず、営業が難しくなります。無理に運転資金を補填しようとすると借入が増え、負債が膨らむリスクがあるため、キャッシュフローが回らない時点で撤退を考えることが重要です。
リピーターの定着率
基準:3カ月以上、リピーターが全体の20%以下の場合。
理由:リピーターの存在は、顧客満足度や店舗の人気度を測る重要な指標です。リピーターが増えない場合、提供するサービスやコンセプトに問題がある可能性が高く、将来的な安定した売上が見込みにくいことを意味します。マーケットニーズとの不一致を示しているため、改善が難しい場合は撤退を検討すべきです。
業界環境や立地条件の変化
基準:近隣に競合が増加し、集客数が20%以上減少した場合、または立地条件が悪化し、来客数の減少が続く時。
理由:飲食店は立地や周囲の環境の影響を大きく受けます。競合の増加や地域の人の流れが変わると、集客に大きな打撃を受ける可能性が高いため、環境変化に柔軟に対応できない場合は廃業を検討する必要があります。
自己成長や幸福度の減少
基準:経営が精神的・身体的な負担となり、幸福度が大幅に低下した時。
理由:飲食業は労働時間も長く、ハードな仕事です。事業の運営が本人の健康や家庭生活に支障をきたしている場合、無理に続けることは将来の生活にも悪影響を与える恐れがあります。自分自身の幸福も事業の成功の重要な要素であり、それを損なうまで継続するのは避けるべきです。
こうした撤退基準は、感情に左右されずに客観的な判断をするための指針となります。
無理して店舗運営を続けたら・・
無理して飲食店の営業を続けると、深刻な問題が起こりやすくなります。
この先、長期的には大きな負担になります。
財務状況の悪化と負債の増加
無理に店舗を維持すると、営業資金を借入に頼らざるを得なくなり、返済が困難になることが多いです。
あるカフェ経営者が店舗維持のために追加で融資を受け続けた結果、売上以上の負債を抱え、最終的には自己破産を選ばざるを得なくなった事例があります。
借入によって財務負担が増すと事業改善が難しくなり、負債だけが残る結果になりがちです。
精神的・肉体的な疲弊
売上が低迷する中での営業は、経営者に大きなストレスをもたらします。
あるラーメン店経営者は、赤字が続く中で長時間労働を余儀なくされ、睡眠時間が減少して健康状態が悪化した結果、過労により入院を余儀なくされた例があります。経営のストレスや疲労が重なると、判断力やモチベーションも低下し、経営そのものがさらに悪化してしまいます。
サービスや品質の低下
資金不足や疲労から、品質の維持が難しくなります。
ある居酒屋が経営不振の中、安価な食材に切り替え、スタッフの数も削減した結果、顧客満足度が低下し、さらに客離れが進んだケースがあります。品質やサービスが落ちるとリピーターが減り、さらに収益が悪化する悪循環に陥る可能性があります。
店舗の資産価値の低下と廃業費用の増加
資金が不足すると、店舗の維持管理が難しくなり、設備が老朽化して資産価値が低下します。
レストランでは、閉店時期を決めずに営業を続けたために店舗が老朽化し、設備の修繕が追いつかず、廃業する際の撤去費用が膨らんだ事例があります。このように、早期の判断を行わないと、資産価値を保つのが難しくなり、廃業時に余計な費用がかかることがあります。
キャリア再建が難しくなる
多くの資金を投資して続けた店舗が閉店となると、事業再建や別のキャリアへの転向が難しくなることもあります。
あるシェフが大きな負債を抱えて閉店した後、新たな店舗を構えるための資金が確保できず、同業に戻るのが難しくなったケースがありました。事業撤退が遅れると、新しいキャリアへの移行にも支障が出る場合があります。
まとめ
無理な営業の継続は、経営者の財務、健康、家族との関係、さらには次のキャリアにまで悪影響を及ぼすリスクがあります。
早期に廃業基準を設定し、状況に応じて撤退を判断することで、再起や新たなチャレンジがしやすくなることが多いです。
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事業を成功させる事は容易な事ではありません。
初めての開業事業で軌道に乗れば問題ありませんが、上手く行かない時に再チャレンジを如何に早く取り組めるかがとても重要です。
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